このコラムで一番始めに解説したのが「英語で考える英語脳は成人してからの勉強では作れない」ですが、今回はこのテーマについて別の角度からもう少し詳しく解説してみたいと思います。
日本人が日本語で会話している時は
そもそも私たち日本人が、日本語を使って会話している時、頭のなかでは日本語で考えているかというと、必ずしもそうではありません。
例えば「お母さん」という言葉を聞いた時、あなたの頭の中でどういう反応が起きているかを考えてみると分かりやすいと思います。
辞書をめくるように「子供が自分の母親を呼ぶ時に使う語、母親が自分を指して言う言葉・・・」などと意味を頭に思い浮かべている訳ではありません。
あなたが「お母さん」という言葉を聞いた時、脳内では一瞬で言葉にならない「概念」が想起され、「お母さん」という言葉の意味を直接認識しているのです。
このため、ネイティブの日本語を操る事のできるあなたは、高速で日本語を聞き取り、一瞬で自分の気持ちを相手に返す事ができるのです。
「いや、私は確かに頭の中で日本語を使って考えている」という人もいると思いますが、それは単に頭の中に出来上がっている思考を、日本語を使って確認しているにすぎません。
英語を使って考えるは非効率
このようにネイティブの日本語を巧みに操るあなたでさえ、頭のなかでは日本語を全く使っていないのです。また、辞書をめくるように日本語で意味を考えながら、会話するのがどれだけ非効率で意味のないことかも分かっていただけると思います。
当然、英語をネイティブに使いこなしている人達の思考過程も、日本語ネイティブのあなたと同じで、頭の中で英語辞書をいちいち引いている訳ではありません。
つまり、英語学習の場合の「英会話は英語を使って考える」というアドバイスは全くの見当違いで、効率も悪く実際の英会話ともかけ離れているのです。
リスニングの最終目標
しかし、頭の固くなった我々大人が、この言葉の概念を直接理解しながら会話するというのも無理があります。
そこで英語のリスニング学習の最初の段階では、作業記憶(ワーキングメモリ)を使って英語の意味を日本語に置き換えて頭の中に保持し、意味の通る日本語に組み立て直して理解する。という手順を踏みます。
そして最終的にはこのリスニング技術を磨き上げ、英語を概念で捉え直接理解するという、高速化されたリスニング能力の獲得を目指します。
これは、「英語を英語を使って理解する」という英会話学校で良く言われている学習方法とは全く次元の異なるものです。