みなさんも一度は聞いた事があると思いますが、英会話を指導する際のアドバイスとして「英会話を習得するには、いちいち日本語に訳さず、英語で直接考えるのが良い」というものがあります。
俗にいわれるところの「英語脳」を作るという学習方法ですが、この英語脳を作る学習方法は、厳密には「2つ」の方法があります。
一つは、「英語で聞いて英語で意味を考え、英語で発言する(英語で考える英語脳)」というもので、これは先ほども言った英会話学習などでアドバイスされている方法です。
この方法は、英語で聞いた言葉を頭の中で英語で解説し、英語のまま理解します。一見英語の学習において理にかなった方法に思えますが、実際のアメリカ人の頭の中でそのような意味付けが行われている訳ではありませんし、初心者がいきなりやるには難易度が高すぎ非効率です。自分の英語力の無さに打ちのめされ、いずれ英語の勉強もやらなくなってしまうでしょう(この方法については後日「ネイティブは英語を直接概念で捉えている」でも詳しく解説します)。
もう一つは、「英語で聞いた言葉をそのまま概念で捉え、即座に英語で発言する(ネイティブ英語脳)」という方法です。これは、ネイティブのアメリカ人が頭の中で行っている方法で、日本人でも小さな子供の時から英語に触れる事で習得することができます。
ただ、これは10代までの脳細胞が柔らかい子供には当てはまりますが、私のような40代の人間にはちょっと効率が悪く非現実的です。
英会話をマスターするのに遅すぎるという事はありませんが、このような英語で直接思考するネイティブ英語脳を作るには、40代の脳細胞では残念ながら柔軟性が足らないのです。
英語と日本語の脳領域は離れている
実際に脳を調べてみると、若い頃から英語と日本語に触れていたバイリンガルの人の脳は、英語で考える領域と日本語で考える領域が多くの部分で重なり合っていますが、成人してから英会話をマスターした人の脳は、その領域が完全に離れているという結果が出ています。
従って、これから英会話をマスターしようと考えている成人の脳も、小さい頃に英語の飛び交う環境に身を置いていたというような特殊な事情が無い限り、完全に英語で考える脳の領域と、日本語で考える領域が完全に分かれていると考える方が自然です。
つまりそのような人に、いきなり英語で考えようと指導しても、遠回りになるばかりで効率的な英会話学習などできるはずがありません。
もちろん、このような人でも英会話学習を続けて行くうちに、どんどんとこの2つの領域が近づき、隣接し合うようになる事は十分に可能です。
しかし、最初のうちからこの離れている2つの脳領域を無視して、強引に「どんどん直接英語で考えましょう」と言ってもハードルが高すぎるので、始めはこの2つの領域を繋ぐための大きな道を作ってやる事が大切です。
成人した大人の脳では、英語で考える事は難しいのですが、英語の論理構造を使って日本語で考える事は十分可能です。つまり、この2つの領域を繋ぐために、日本語を使った橋渡しが必要になります。
大人の英会話学習方法
大人になってからの英会話学習では、この「英語で直接考える若者の為の学習方法(ネイティブ英語脳)」を目指すのではなく、また、英会話学校などで薦められている「英語を聞いて頭の中で英語で意味を考える(英語で考える英語脳)」という方法もとりません。英語と日本語という脳の二重構造を使った学習方法で、効率的に学習を進めていきます。